憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

特定物ドグマって?ー【合意原則】1ー司法試験【対話式 論点分析】

---コンコン---

阪奈: 初戸先生、こんにちは。
 今、よろしいでしょうか?

初戸: はい、どぉぞー。

阪奈: 失礼します。

---ガチャ---

阪奈: 授業後にすみません。
 今日も初戸先生に質問があって神渡さんと2人で先生の研究室にお邪魔しました。

流相: あ~、もしもし、あと1人いるんですけど、無視ですかぁ?

阪奈: …
 ついでにあと1人追加です。

初戸: どうしましたか?

神渡: 民法の「特定物ドグマ」について質問があります。

初戸: かつての通説ね。

流相: えっ?今もそうじゃないんですか?

初戸: 今は違うわね。

神渡: 瑕疵担保責任(570条)の法定責任説は「特定物ドグマ」を前提としている、ということですけど、「特定物ドグマ」は当然のことを言っていて特に批判されるような点があるようには思えないのですが?

初戸: う~ん、そうねぇ、じゃ、「特定物ドグマ」とは何なのかしら?

流相: はいはい!ボクが。
「特定物ドグマ」とは、

「特定物売買において、瑕疵のある特定物の引き渡しは、瑕疵のない完全な履行である」(潮見佳男『プラクティス民法 債権総論(第3版)』(信山社、2004年)23頁)

という考え方です。

初戸: そうですね。
 そのドグマによると瑕疵担保責任はどう説明されるのですか?

阪奈: 我妻先生は、次のようにおっしゃっています。

特定物の賣買では、賣主は契約で定められたその特定の物を給付する債務を負うだけだから、それを給付すれば、債務の履行は完了する。その目的物が契約當事者によつて豫定された品質・數量を缺く場合には、買主の錯誤(場合によつては賣主の詐偽)の問題を生ずるだけで、債務不履行の問題を生ずる餘地はない。然し、それでは、當事者間の公平をはかり取引の信用を維持するゆえんでないとして、民法が特に擔保責任を認めたもの…(我妻榮『債権各論 中巻一(民法講義V2)』(岩波書店、1957年)272頁)

としています。

流相: 今時、我妻先生?
 しかも、我妻先生のその本、旧字体だし…。読んでる受験生なんて絶対いない!

阪奈: 全体として我妻先生を超える学者は今だいない、というもっぱらのうわさよ?
 今でも大きな影響力を持っているんだから。

初戸: そのとおりですね。
 偉大な先生です。
 我妻先生は、阪奈さんが引用した該当箇所で、「特定物ドグマ」を、

特定物の賣買では、賣主は契約で定められたその特定の物を給付する債務を負うだけだから、それを給付すれば、債務の履行は完了する。

と表現されていますね。
 問題は、そのドグマが妥当なのかどうかです。
 「特定物ドグマ」に対してはどういった批判がありますか?

神渡: 内田先生は、ピカソの「サーカスの少年」と題する絵(特定物)の売買では、「特定物ドグマ」にそれなりに説得力があるとしています。その絵に隠れたキズがあっても、「サーカスの少年」という絵は一点物ですから、キズのないその絵は、この世に存在しないからです。
 ですが、売買目的物が中古自動車でブレーキに不具合がある場合には、「特定物ドグマ」に基づく説明に不自然さが伴うとしています。

なぜなら、売主の債務は、ブレーキの不具合のない車・・・・・・・・・・・・の給付であったと解することも十分可能だからである。いくら中古車や中古テレビのような特定物売買でも、走らない車や映らないテレビを引き渡して債務の履行は終わった、責任はない、などど考えるのは、常識に反する。法定責任説は、特定物の売買における売主の債務の内容を余りに狭く解しており、取引における通常の期待にそぐわないのである。(内田貴『民法Ⅱ[第2版]債権各論』(東京大学出版会、2007年)125頁)

 ということです。

初戸: そういった批判がありますね。
 で、今の学会では、その批判がほぼ共有されているといえます。
 ですから、おそらく、「特定物ドグマ」を前提とする法定責任説はもはや通説ではなく、契約責任説が通説になった、といってもいいと思います。

神渡: たしかに、法定責任説には、内田先生がおっしゃるようなおかしなところがあると思います。
 ただ、契約責任説は、上のピカソの絵についても、瑕疵がある以上、売主の債務不履行責任が生じると考えているようです。
 ピカソの絵では、契約責任説のその説明が、私には不自然な気がしますが…。

流相: 僕は、法定責任説しか論証を用意していなかったから、そんなこと考えたことないなぁ…。

初戸: この問題は、瑕疵担保責任だけの問題ではなく、契約とは何か?債権とは何か?というもっと大きな概念と関わってくる大問題です。民法の理論といわれる部分の話ですね。

流相: 民法にも理論があるのですか?
 刑法のような?

阪奈: 学問である以上、理論がないわけないじゃない!
 あんた民法を何だと思ってるの?

流相: 私人間の利益を調整するための単なるものさし?

阪奈: どんだけ民法を馬鹿にしてるのよ!
 初戸先生に謝りなさい!!

初戸: ハハハ(苦笑)
 良いのよ。
 大抵は流相君のような感想を持っている人が多いんだから。

流相: でも、「債権」って、人に対する請求権のことだろ?
 それがどう「特定物ドグマ」と関係するんだろ?

初戸: 流相君、実は、「債権」って何ぞや?というところは争いがあるのよ?
 「債権」を請求権と捉えるのは、1つの考え方にすぎないの。

流相: えっ、嘘…ですよね?

阪奈: …
 先生が私達に嘘つくわけないじゃない!
 何言ってんだか。

---次回へ続く---

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