憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

行為共同説は矛盾しているのでしょうか?【対話】司法試験論点分析・”暗黒の章” 共同正犯論17

神渡: この事例では、AもBもどちらも甲を「ナイフで刺す」という客観的行為の謀議をし、その謀議に従って甲をナイフで刺しています。

甲殺害の意図を持つAと傷害の意図しか持っていないBがナイフで甲を刺すことを謀議し(ただし、Aが甲殺害の意図を持っていたことをBは知らなかったとします)、ABともにその謀議に従い甲をナイフで刺し、その結果甲は死亡したが、致命傷はBの行為から生じた。

犯罪共同説vs行為共同説

神渡: つまり、ナイフで甲を刺すという同一の「客観的行為」を共同しているわけです。この共同により、単独では因果関係の認められないAの行為に甲死亡結果を帰属させることができます。
 ですので、因果的共犯論の考えからは、同一の「客観的行為」の共同があれば共同正犯を認めることができる、ということになるのではないでしょうか?

流相: わかったような気もするんだけど…
 でも、異なる犯罪間で共同正犯を認めることにはどうも違和感があるんだよなぁ…

玄人: 思考のヒントとしては、共同正犯論がなんのための議論であったかを考えることが、過失犯の共同正犯の場合と同様にここでもポイントとなる。

流相: たしか、「一部行為全部責任」を認めるための議論が共同正犯論です。

玄人: うん、そうだな。
 で、それは犯罪成立要件の何の問題だ?

流相: え~と、因果関係です。

玄人: 単独犯ならば因果関係がない行為であっても、実行行為を共謀したのであれば、共犯者の行為を通じて結果との間に因果関係が認められる、ということを説明するのが「共同正犯」の議論のポイントだった。
 ということは、共同正犯はどの段階の問題だ?

流相: 因果関係の問題ですから構成要件の段階の問題です。

玄人: そうしたらもう行為共同説を理解することができるんじゃないか?

流相: え~と…
 因果関係の問題というのは分かりましたが、しかし、やはり異なる犯罪間で共同正犯が成立するというのは理解できません。
 異なる犯罪間での共同正犯ということは、異なる実行行為間での共謀が成立するということですよね?
 ところが、「共謀」という言葉は、「共に謀る」という意味でして、それは謀議内容が同一でないといけないと思います。同一内容の謀議があって初めて他人の行為を利用し自己の行為の補充とすることができるからです。異なる犯罪の共謀をしても相互利用補充はできません。
 ですので、異なる犯罪間での共同正犯を認める行為共同説はどうも矛盾しているように思えてならないのです。

阪奈: まぁ、犯罪共同説に凝り固まっている流相には理解することができないでしょうね!

流相: 今回のこの疑問は結構自信があるんだが。

阪奈: ふふん(笑)
 今、流相は、

異なる犯罪間での共同正犯ということは、異なる実行行為間での共謀が成立するということ

阪奈: と言ったわね。

流相: うん、言ったよ。

阪奈: そこが違うのよ!
 私も、流相が言うように、異なる実行行為間での共謀が成立するとは思えないわ。

流相: そうだろ?

阪奈: それでも、行為共同説は異なる犯罪間での共同正犯を認めている。
 ということは、同一の実行行為間での共謀を認めているのよ、行為共同説は。

流相: いやいやいや、何を言っているのかな、阪奈さんは!
 殺人罪の実行行為と傷害致死罪の実行行為は全然違うよ。
 殺意を持って人をナイフで刺す行為には人の生命を断絶させるに至る現実的危険性、つまり殺人罪の実行行為性があるけど、殺意を持たない単に傷害意図しか持たないで人をナイフで刺す行為には人の生命を断絶させるに至る現実的危険性は認められない、つまり、殺人罪の実行行為性は認められないだろ?

阪奈: まさにその実行行為性の判断がここでは問題になっているのよ!

神渡: あっ!
 そうなのね!分かったような気がするわ。
 行為無価値的発想は実行行為該当性の判断に行為者の主観面を考慮するから流相君の言うように、殺意ある者の行為と傷害意図しかない者の行為の危険性の程度は異なってくるけど、結果無価値的発想だと実行行為該当性の判断に行為者の主観面は考慮せず、客観面だけで判断するから殺意があるのと傷害意図しかないのとで行為の危険性判断は変わらないということになる…

流相: ということは?

神渡: ということは、殺人罪の構成要件も傷害致死罪の構成要件も同じということになると思います。

流相: え~~!

 あっ、でもそういう説あったよね。

阪奈: そう。
 平野先生は次のようにおっしゃっているわ。

殺人・傷害致死・過失致死は、「犯罪類型」としては異なるが、構成要件は同じだ・・・(平野龍一『刑法 総論Ⅰ』(有斐閣、1972年)98頁)。

流相: とすると、上の例だと、ナイフで人を刺す行為が実行行為で、これは、ABの主観にかかわらず同一の実行行為ということになるの?
 つまり、ナイフで人を刺す行為は、殺人罪の実行行為にもあたるし、傷害致死罪の実行行為にもあたると…

阪奈: そういうことになると思うわよ。
 客観的には、ナイフで人を刺す行為には、行為者の主観を問わず人の死をもたらす危険があるので、この行為は、殺人罪の実行行為にも傷害致死罪の実行行為にも該当するというわけ。
 そうすると、同一の実行行為についての共謀が成立することになるわね。
 この事例では、ナイフで人を刺すという同一の実行行為についてABは共に実行することを謀っているということ。

流相: へぇ~~!
 なるほどねぇ。
 ん?でも待てよ。
 最終的に、行為共同説は上の例で、殺意のあったAには殺人罪の共同正犯を、殺意はなく傷害意図しかなかったBには傷害致死罪の共同正犯を認めるんだよね?
 結局、異なる罪名についての共同正犯を認めることに変わりはないじゃないか!
 何かおかしくないかな?

---次回へ続く---

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