憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

過失犯の構造と共同正犯の議論の射程の交錯ー過失犯の共同正犯ー【対話】司法試験論点分析・”暗黒の章” 共同正犯論15

神渡: 現在では、新旧過失論で過失の構成要件該当行為を認めるわけで、その行為(実行行為)の共謀は可能ですから過失犯の共同正犯の構成要件該当性を肯定することに争いは(ほとんど)ない、といえるわけですね。

流相: ということは、やはり新過失論の勝利ということだ…よね?

阪奈: 違う!
 そういうことではないの!
 過失犯の共同正犯の構成要件該当性が肯定されたとしても、最終的に共同者全員に過失責任が認められるか否かについては今でも争いがある、そこに過失犯の構造が影響するというわけなの。

流相: え~、そうなのかぁ?
 過失犯の共同正犯の構成要件該当性が認められたら、共同者全員に過失責任も認められるんじゃないの?

阪奈: まぁ、井田先生のように、責任要素としての過失を不要とする【井田良『刑法総論の理論構造』(成文堂、2005年)121頁】新過失論者からすると、過失犯の共同正犯の構成要件該当性が認められれば違法性の意識の可能性がなかったというような例外的場合を除いて過失責任が認められるでしょうね。
 でも、団藤先生のように、過失犯の本質を不注意(無意識)に求める旧過失論では、最終的に過失責任が認められるかは共同者個々人の予見可能性の問題となってくるわ。
 予見可能性は個々人について検討するのだから、たとえ、過失犯の共同正犯の構成要件該当性、つまり、過失実行行為の共謀が肯定されても、そのことが当然に共同者各人の予見可能性の存在を肯定することにはならない、よって、最終的に過失責任が認められないということもあるわよね?

流相: ま、まぁそうだね。

神渡: なるほど!
 要は、過失犯の共同正犯の議論は、過失実行行為の共謀の成否、つまり過失犯の共同正犯の構成要件該当性をめぐる議論だったというわけよね?
 ただ、従来は、新過失論が過失の実行行為を認め、旧過失論が過失の実行行為を認めていなかったから、新過失論からは過失犯の共同正犯肯定説が、旧過失論からは過失犯の共同正犯否定説が導かれていたというわけで…

阪奈: そうね。

阪奈: つまり、

新過失論→過失の本質は注意義務違反行為→過失の実行行為肯定→過失実行行為の共謀肯定→過失犯の共同正犯成立

旧過失論→過失の本質は無意識→過失の実行行為否定→過失の共謀否定→過失犯の共同正犯否定

阪奈:という図式が成立していたわけなの。

神渡: ところが、その後、旧過失論でも

結果発生の「実質的で許されない危険」を持った行為(平野龍一『刑法 総論Ⅰ』(有斐閣、1972年)193頁)

神渡:を過失の実行行為と理解したのに伴って、旧過失論側からも、その過失実行行為を共謀することは可能とされ、過失犯の共同正犯の構成要件該当性が肯定されるというようになったわけですね。
 ただ、旧過失論は不注意(無意識)を過失の本質と捉えるから、最終的に過失責任が認められるかは、各共同者の予見可能性による、という個別的責任判断に委ねられる、というわけですよね?

玄人: いいんじゃないかな!
 まとめると、過失犯の共同正犯の議論を理解するにあたっては、

(1)過失犯の構造の理解
(2)共同正犯の議論の射程

玄人: この2点を理解することが必要となる。
 それぞれが難しいから、その2つが交錯する過失犯の共同正犯の議論を理解するのはさらに難しいといえる。
 なので、もう一度、ゆっくり考えてみてくれ。
 そうすれば必ず理解することができるから。

 さて、次は、犯罪共同説VS行為共同説の議論をしておこう。
 体系的には、共同正犯の個別の議論をする前に検討しておくべき問題ではあるが、個別の議論を少ししたうえで、この議論に戻ってくると具体的なイメージを持ちやすいだろうと思って少し後回しにした。

---次回へ続く---

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