憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

承継的共同正犯-「限定承継説」の妥当性-【対話】司法試験論点分析・”暗黒の章” 共同正犯論9

玄人: これまでに検討した共同正犯の処罰根拠からすると、「全面承継説」を採用することはできない。
 残るのは、「限定承継説」と「承継否定説」となる。
 次は、近時有力となっている「限定承継説」を検討しよう。
 「限定承継説」はどんな考えだ?

流相

先行者の行為の効果を利用する限度で承継的共犯を認めうる(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)383頁)

流相:という考えです。

玄人

YがAを強盗目的で殺害した後にYから事情を知らされたXが死体からの財物の奪取に加わった場合
承継的共同正犯(典型例図2)

玄人:だと、どういう結論になる?

流相: Yの刺突行為の結果、Aは死亡しています。A死亡により、Aの反抗は抑圧されていますから、A死亡の効果として、反抗抑圧状態が生じています。
 Xは、Yの刺突行為から生じた効果であるAの反抗抑圧状態を利用して財物を奪取していますから、「限定承継説」からは、強盗罪の共同正犯となります。

玄人: そうなるだろうな。
 では、この説を共同正犯の処罰根拠から導くことはできるだろうか?

流相: できると思います。

玄人: では、説明してくれ。

流相: はい。
 Yから事情を知らされてAの財物を奪取しようとの謀議がXYでなされ、その謀議に基づきAの反抗抑圧状態を利用して奪取行為がなされているため、XYに強盗罪についての相互利用補充関係が認められるからです。

阪奈: そうかしら?
 この事例では、強盗罪について相互利用補充関係は認められないと思うのだけど?

流相: 今、僕が説明したようにXYは、Aの反抗抑圧状態を利用してAの財物を奪取しようという謀議をして、その謀議に基づき財物を奪っているのだから、「相互利用補充関係説」からは強盗罪の共同正犯を認めることができると思うよ?
 それに、XはYから事情を知らされて犯行に加わっているから、強盗罪としての責任非難は十分に可能で、窃盗罪の共同正犯か、占有離脱物横領罪の共同正犯とかが成立するだけでは、処罰感情的にも難しいでしょ?

阪奈: 科刑を処罰感情に頼ることは危険だわ!
 この問題は、共同正犯の処罰根拠で説明することができるか否かにかかっているのよ!

流相: だから、「相互利用補充関係説」からでも説明できると今僕が説明したじゃないか!!

阪奈: そこが問題だと言っているの!
 説明することはできないのよ。

流相: 何故?

阪奈: そもそも、「相互利用補充関係説」は、どういう考えだったかというと、

複数人の行為を結合して1つの”実行行為”を複数人が実行したといえること

阪奈:に共同正犯の処罰根拠を求める考えだったはず。

流相: それはそうだよ。

阪奈: ということは、XとYのそれぞれの行為を結合して1つの強盗行為を実行したといえなければならないわけよね?

流相: うん。

神渡: あっ!

阪奈: 神渡さん、気がついた?

神渡: 阪奈さんの言いたいことが分かったかもしれない!

流相: ん?

阪奈: Xが情を知った時点では、強盗行為である刺突行為はYによって既に実行された後なのよ!

神渡: ということは、X知情時点でXYで謀議があってもその謀議に基づきYの刺突行為(強盗罪の実行行為)がなされたとは言えない・・・

阪奈: そういうことなのよ。
 「相互利用補充関係説」であっても「謀議に基づく実行行為」があること、つまり、

共同正犯の判断枠組2

阪奈:が要件なのよ。
 ところが、この事例では、謀議は、強盗の実行行為後になされているから、強盗罪の共同正犯は成立しないわけ!

流相: う~む・・・
 だけど、反抗抑圧状態を利用したということは、その反抗抑圧状態を惹起した刺突行為(強盗罪の実行行為)を利用したと言えるんじゃないか?
 準強姦罪(178条2項前段)だって、抗拒不能に乗じて姦淫した者を強姦罪として処罰しているじゃないか!

阪奈: 準強姦罪についてはその通りね。
 でも、ここで問題となっているのは、強盗罪(236条)なの!
 強盗罪では、準強姦罪のような規定はないわ。

抗拒不能に乗じて財物を奪取した者を強盗罪と同様に処罰する規定はない。(松原・前掲書384頁)

阪奈: つまり、

・・・強盗罪の不法内容は、単に抗拒不能の状態を利用して・・・財物を奪取したりすることではなく、人に暴行または脅迫を加えて・・・財物を奪取したりすることにあると解されている。それゆえ、強盗罪・・・では、暴行・脅迫の事実は単なる行為状況ではなく、行為者によって惹起されるべき法益侵害の内容であって、承継的共犯にあっても、抗拒不能状態のみならず、暴行・脅迫の事実に関する帰属が問題とされなければならない。(松原・前掲書384頁)

阪奈:というわけ。
 流相は、先行事実の利用を理由に後行者に帰属を認めているのだけれど、それは、

現行法が準強姦罪のような「利用型」の犯罪類型と強姦罪・強盗罪のような「惹起型」の犯罪類型とを区別していることを無視する

阪奈:ことになるわね。

流相: そ、そんな・・・

 でも、良く分かった!
 なんか、「効果の利用」で承継的共犯を説明する「限定承継説」って実はよく分からなかったんだよねぇ~。
 今日は、よく分からなかった部分が分かって良かったよ!
 つまりは、「限定承継説」はこれまで検討してきた共同正犯の処罰根拠論から説明することはできないし、この事例で強盗罪の共同正犯を認めるのに「効果の利用」をもって説明したのでは、「惹起型」の犯罪類型を「利用型」として扱うことになり、罪刑法定主義にも反するということだよね?

阪奈: そういうこと。

玄人: だいぶ、まとまったな。
 じゃ、次は、承継否定説と近時の判例を検討しよう。

---次回へ続く---

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