憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】実行の着手を巡って(研究室404にて)

講義終了後、神渡は斜め後ろの阪奈に話しかけた。

神渡:玄人先生は、「危険結果説」を支持しているんだね。

阪奈:そうなの。多様な価値観を認める先生だと思うわ。

神渡:私は、まだ全然考えが決まらないのよね。

流相:僕は、「危険行為説」が妥当だと思うんだよな(突然、流相君が話に割り込んできた)。

阪奈:はぁ?何言っているの、あんた。

神渡:(あんた呼ばわり?)

流相:おいおい、久しぶりにあったのに、いきなり「あんた」かよ。

阪奈:あんただっていきなり私たちの会話に割り込んできておいて何言ってんのよ。女子会の最中だったのに。

流相:いや、だって勉強の話してただろ。僕が入ってきても良いじゃないか。

神渡:私も良いと思うわ。3人で話しましょうよ。

阪奈:まぁ、神渡さんがそういうなら良いけど。あんた良かったわね。神渡さんに救われたわよ。

流相:神渡さん、ありがとうございます(まったく、阪奈はなんでいつも俺に対してこんなに好戦的なんだよ)。

神渡:いえいえ。
ところで、今から玄人先生の研究室に行きません?

流相:お、いいね。

阪奈:私は嫌よ。部屋が汚すぎるもの。

流相:じゃ、お前は行くなよ。俺と神渡さんだけで行くからさ(その方が好都合だし)。

阪奈:はぁ?何言ってんの、あんた。あんたと神渡さんだけで行かせたら神渡さんが危ないのよ。

流相:な、何を言ってい・・・

阪奈:じゃ、しょうがないな、私も付き合うよ。

神渡:ありがとう、じゃ行こうか。

流相:(はぁ~)

「コンコン」
「は~い、開いてるよ」

阪奈:先生、こんにちは、5分ぶりです。この研究室相変わらず汚いですね。掃除しないんですか?

玄人:久しぶりに研究室にきてそれかい?もっと他に言うことがあるでしょうに。私は、この方が落ち着くんだよ。この研究室をどう使おうと私の自由さ。

阪奈:この状態ではこの研究室を退去するときに多額のクリーニング代を請求されると思いますよ。払えますか?

玄人:ま、まさか?そんな請求はしないだろう?

阪奈:やるかも知れませんよ。この汚れ具合を見たら。

玄人:先生を脅かすんじゃない!
それより、今日は何をしに来たんだ。

神渡:あ、先生すみません。先程の講義で質問があるので来ました。

玄人:お、神渡さんもいたんだね。いや、阪奈さんが大きくて見えなかったよ。

流相:先生、僕もいますよ~。

玄人:おお、流相君もいたんだ。

阪奈:はぁ!セクハラですよ、先生。相変わらず無神経ですね。そのうち奥さんに見捨てられますよ。

神渡ちょっと、阪奈さん、もうやめてよ。早く質問に入ろう。

阪奈分かったわよ。

神渡:先生は「危険結果説」を支持すると講義でおっしゃっていました。その際、この説が憲法の価値観にも合致すると理由付けをして要らしたのですが、どういうことでしょうか?
あと、実行行為の構造(実行行為と実行の着手との関係)についても教えてください。

玄人:さっそく、その質問に来たのか?勉強熱心だな。
まずは、「危険結果説」を支持する理由から説明するか。
流相君に聞くが、憲法は何のためにあるんだい?

流相:それは、国家権力を制限するためです。

玄人:間違いではない。でも、それだけではない。

流相:え~。法学部ではそう習ったんですけど。

玄人:学部レベルではそれで十分だけど、ロー生にはそれでは不十分だ。憲法の長谷部先生の本も読みたまえ。私は、憲法の先生ではないので、結論だけ言おう。
憲法の存在理由は、『多様な価値観の公平な共存』を実現する点にあるんだ。そう考えると、行為規範を国民に示すという行為無価値論の考え方は、この憲法観と合わないんだ。

流相:どうしてですか?
憲法が『多様な価値観の公平な共存」を実現するためにあるとしても、最低限のマナーというものを事前に国民に提示して法益を保護することはその価値観に反しないと思うのですが・・・。

玄人:たしかに、行為無価値論者はそういうんだよね。
しかし、最低限のマナーって何だろうか?誰がどう決めるのだろうか?結局、多数派が「これが最低限のマナーなのです」というものが最低限のマナーということになるのだろう。
私としては、行為規範という曖昧なもので刑罰権を行使することは許せないのだよ。法益が侵害された場合、あるいは、法益侵害の切迫した危険性が生じた場合に限定して刑罰権を行使すると考えることが『多様な価値観の公平な共存』を実現するために必要だと考えているわけだ。
規範違反行為があっても、法益侵害がない、法益侵害の切迫した危険もない行為をする自由を認めるという立場が上の憲法観に合致すると考えているんだ。

流相:ですが、現在の行為無価値論は法益保護と結び付いた行為無価値論(二元的行為無価値論)ですから、単なる行為規範違反を処罰するわけではないので玄人先生がおっしゃることが良く分かりません。

玄人:たしかに、現在の行為無価値論は結果無価値も考慮する二元的行為無価値論だと言われている。しかし、その実際の適用結果を見てみると、実は行為無価値だけで処罰しているのではないか?と疑わざるをえないんだ。講義では検討していないが、違法性阻却根拠でそのことが問題となるんだ。ここで詳しくは言えないが、「被害者の同意」や「防衛の意思」における二元的行為無価値論の適用結果をみると、結果無価値はないのに、行為無価値だけで処罰する見解が多いんだ。
行為無価値論者は、結果無価値を考慮するといっても、やはり規範違反という行為無価値を重視していると言わざるをえない。

流相:それは、そうかもしれない・・・ですね。

阪奈:あんた、まだ行為無価値論なんかを採っていたの?

流相:そうだけど。

阪奈:考え方が古いのよ!もう21世紀なのよ!

流相:いや、21世紀は関係ないでしょ。それに、古くても良い考え方はあるわけだし・・・。

玄人:ま、この問題はこれくらいにして、次は実行行為の構造にいこうか?

神渡:はい。お願いします。

玄人:さて、「実行の着手」って何だろうね?

 

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