憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

先行行為説、具体的依存性説、排他的支配説の内容とそれへの批判  【対話】司法試験論点分析◇刑法過去問講義-その7-◇平成26年度[刑事系科目 第1問]

流相: 処罰範囲を限定するためには、明確な基準によるべきだと思いますから、僕は(3)限定説(一元説)が妥当かなぁ、と思います。

玄人: 私もその立場だよ。
 問題は、(3)限定説の中で、どう一元的な基準を立てるか?ということになる。

流相: これについても、3説あります。
(a)先行行為説
(b)具体的依存性説
(c)支配領域性説(排他的支配説)
です。

阪奈: さすが、”歩く・・・

流相: はいはい、お褒めいただきありがとうございます。
 でも、もう十分です!

玄人: (夫婦漫才か?)
 で、(a)(b)(c)の3説の内容は?

流相: (a)先行行為説は、法益侵害に向かう因果の流れを自ら設定することを「保障人的地位」を肯定するために要求します。
 (b)具体的依存性説は、法益保護が具体的状況下において、不作為者に依存するときに、その不作為者に「保障人的地位」を肯定する見解です。この説は、”依存性”を肯定するためには、事実上の引受け行為が必要としています。
 (c)支配領域性説(排他的支配説)は、不作為者が結果へ至る因果の流れを掌中に収めていたこと、つまり、”因果経過を支配”した者に「保障人的地位」を肯定する見解です。

玄人: 各説の特徴をよく押さえていると思うよ。
 さすが、”歩く学説辞典”!

流相: 玄人先生までですか・・・

玄人: これら(a)(b)(c)3説とも、作為による結果惹起との等価値性を担保するものとして、先行行為の存在(a)、依存関係の存在(b)や排他的支配の存在(c)という要件を要求している。
 それぞれについては結論の妥当性について批判があるね。
 どういった批判がある?

神渡: 今度は、私が・・・

流相: どうぞどうぞ。
 神渡さん、お願いします。

神渡: (a)先行行為説によりますと、単純なひき逃げが殺人罪になります。なぜなら、瀕死の重傷を負わせるというひき逃げ行為(先行行為)によって、ひき逃げ犯は法益侵害に向かう因果の流れを自ら設定したからです。
 しかし、単純なひき逃げに対しては、判例でも殺人罪の成立を認めていません。処罰範囲が広すぎる、という批判があります。

玄人: そうだね。

神渡: (b)具体的依存性説によりますと、交通事故被害者の不救助事例では、救助意図で交通事故の被害者を一旦自動車に収容した場合には「保障人的地位」が肯定されますが、遺棄の意図で交通事故の被害者を一旦自動車に収容しても「保障人的地位」は肯定されないことになります。
 しかし、一度は仏心を持った行為者(不作為者)が、初めから遺棄の意図を持っていた不作為者よりも重く処罰されることに合理的理由はない、という批判があります。

玄人: うんうん、そうだね。

神渡: (c)支配領域性説(排他的支配説)によりますと、排他性を要求したのでは、不真正不作為犯の同時犯を肯定することができない、という批判があります。

玄人: うん。そういった批判がそれぞれの学説にはある。
 ここで、議論したいのは、どの学説であれ、批判は当然あるから、その批判だけを見ていては学説の海に飲み込まれてしまう。
 学説を分析する際は、どういう理論的関心からその学説を主張しているのか?という学説の根底に遡る分析が必要になる。
 なので、ここでも、それぞれの学説の理論的関心が何なのか?について分析してみよう。

---次回へ続く---

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