憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

『ファイナル性と直接性』 【対話】司法試験論点分析◇行政法過去問講義-その14-◇平成25年度<第2問>

神渡:ですが、富公先生、直接性のことを先ほど、“ファイナル性”と整理されていました。
“直接性”と“ファイナル性”は違う気がするのですが・・・

富公:おっ!
良いところに気がつきました。
“ファイナル”とはどういう意味ですか?

神渡:“最終”だと思います。

富公:そうですね。
ここでの“ファイナル性”とは、“判断の最終性”ということです。
“判断の最終性”と間に介在がないという“直接性”とは言葉の意味としては違いますね。

A→甲

の場合、Aと甲の間に“直接性”が認められます。
では、

A→B→甲

の場合、Aと甲の間に“直接性”は認められますか?

神渡:いえ、Aと甲の間にBが介在していますのでAと甲の間に“直接性”は認められません。

富公:そうですよね。
では、Aの判断が最終的判断で、介在するBは単にAの手足的な位置づけだとすると、Aと甲との間に“直接性”は認められますか?

神渡:あっ!
認めて良さそうです。
刑法の間接正犯に考え方が似ています。

富公:面白い例えですね。
少し説明してもらえますか?

神渡:はい。
刑法では、正犯は実行行為者と理解されています。
刺殺の場合、通常、Aが自分の手で甲を刺します。これが直接正犯です。
直接自らの手で殺人罪を実行しているわけです。
A→甲

ところが間接正犯という類型では、形式的には、甲を刺したのはBであってAではありません。
A→B→甲

形式的に殺人罪の実行行為をしたのはBですからBが正犯となるはずです。
しかし、間接正犯の類型は、実質的にはAがBを(催眠術をかける・殺すと脅すなどして)道具として利用してBに甲を刺させているわけで、甲を刺したのは実質的にはAであると評価することができるわけです。
中間に介在者Bが存在しますが、それでもBの背後にいるAが間接とはいえ、正犯と扱われます。

それと同じではないかと・・・

流相:ですが、介在者がいる点で、“間接”正犯なのですよね?

阪奈:だけど、背後者のAが正犯なのです。
Aが直接実行行為をしたのと同じだという価値判断が間接正犯論にはあります。
その判断構造は“ファイナル性”と同じかと思います。

富公:なるほど、言われるとそうですね。
刑法の勉強はだいぶ前にしたっきりで久しぶりに思い出しました。
間接正犯論での思考は、甲を殺したのは(甲を殺そうと決断したのは)実質的に誰なのか?ということですね。
その思考は、“ファイナル性”と同じですね。
つまり、
甲という法効果をもたらす判断を最終的に下したのは誰なのか?
ということです。

行為と法効果との間に言葉の本来の意味(間に何も介在しない)での“直接性”が認められる場合、行為を決断した主体の最終判断が法効果として現れたといえます。
ということは、
“直接性”というのも、
その行為を決断した主体の最終判断が法効果として現れたかどうか
を判断するための概念だといえます。

神渡:そうしますと、間に何も介在しないという言葉の本来の意味での“直接性”は判断の最終性を認めるための一概念に過ぎない、ということですね。言葉の本来の意味での“直接性”が認められなくても判断の最終性があるならば、判例の「処分」概念にいう「直接」性を充たすという理解で大丈夫でしょうか?

富公:そういう理解で良いと思います。
“ファイナル性”を手始めに実際の法令を使って検討してみましょう。
・医療法と
・健康保険法
でいきます。
病院開設中止勧告事件(最判平成17年7月15日)で問題となった法律です。
この判例で問題となった医療法と健康保険法は、今では改正されています。
その改正された法律で検討してみましょう。
改正された法律の方が“ファイナル性”の判断の練習になりますから。

---次回へ続く---

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