憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】司法試験刑法総論・原因において自由な行為の分析(1)

玄人 :今日は、原因において自由な行為論の分析に入る。
実行行為の理解と責任の理解が要求される点で刑法総論の中でも難しい論点なので頑張って欲しい。
では、具体例から行こう。

流相 :次のような事例があります。

≪Aが酒の力を借りて甲を殺すことを意図して大量に飲酒をし、その意図通りに自己の責任無能力状態を利用して刀で甲を斬り殺した≫

玄人 :この事例のAにどのような犯罪が成立するだろうか?

流相 :殺人罪が成立します。

玄人 :どう分析したのかね?

流相 :え~と、Aが甲に刀で斬りかかった時点ではAは責任無能力ですが、Aはそのような責任無能力状態を自ら招いていますから殺人罪に値します。

玄人 :それは、単に結論を言っただけだな。
たしかに、結論はそうなると考える人が多い。
そこに至る理由付けが重要だ。
この事例の分析はどうする?

神渡 :Aは甲を殺す意図を持っていますから、殺人罪の成否を検討します。
まず、殺人罪の構成要件該当性から見ていきます。
「実行行為」は刀で斬りかかる行為だと思います。その行為に、甲死亡の具体的危険性が認められますから。
その実行行為から甲死亡結果が生じていることは明らかですので「実行行為→結果」間の因果関係も問題なく認められます。

玄人 :刑法の「思考枠組」に従った良いスタートだ。
続けて。

神渡 :正当防衛などの違法性阻却事由も見あたりません。
そして、実行行為時に刀で甲を斬り殺すという意図をAは持っていましたから、殺人罪の故意もあります。
ですが、実行行為時にAは責任無能力です。「行為と責任の同時存在の原則」からしますと、原則としてその実行行為を問責の対象行為とできません。

玄人 :そうなるね。
とても良い分析だ。
ここまでは、皆大丈夫かな?
「原因において自由な行為」は有名な論点だから、いきなり責任の問題に飛びつく人が多いが、今神渡さんが分析したように、ちゃんと構成要件から検討していくことが必要だ。

・実行行為の検討、
・故意の検討、
・行為と責任同時存在原則の検討

が重要なんだ。ここまでの分析を踏まえて初めて「原因において自由な行為」の問題意識が出てくるわけだ。
その問題意識は何だ?

神渡 :原則通りで行くとAは無罪となるのですが、Aは自己の責任無能力状態を利用して当初の計画通りに甲を殺害しています。このAを無罪にしていいのだろうか?というのが「原因において自由な行為」の問題意識だと思います。

玄人 :そうだ。神渡さんが分析した通り。

流相 :(なるほどね。構成要件該当性からちゃんと分析すれば問題意識がすっと出てくるんだ)

玄人 :ここまで分析して初めて「原因において自由な行為」論のスタートに経つことが出来るわけだ。
では、続けようか。

・・・(2)へ続く。

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