憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【政教の完全分離は可能か?】―憲法過去問(平成24年)―【対話】司法試験論点分析・13

神渡: ファシズム化について、国家神道・神社神道に罪があったと考えるのか、罪はなかったと考えるのか?ですか…。
 難しい…ですね。

払猿: そうですね。神道研究者や神職の方々が様々な議論をしています。
 議論を追うこと自体大変ですね。
 憲法で“政教分離”の研究論文を書くのであれば、彼らの議論もしっかり理解しないといけませんが、受験生にはそこまでは不要ですね。
 先の大きな議論の対立がある、ということを知るだけでも十分だと思います。

流相: まとめると、次のようになりますね。

神社神道が国家神道の基盤になりファシズムが推進されたとの認識
⇒厳格分離

ファシズムを推進したのは国家神道でも神社神道でもなく、右翼的な在野の狂信的・神秘主義的神道だったとの認識
⇒緩やかな分離

払猿: そういう大きな違いがあることを理解すると“政教分離”は理解しやすくなります。

神渡: 厳格分離も分かりますが、そもそも「国家と教会」を完全分離したとしても、「国家と宗教」の完全分離まではできないような気もします。
 なぜなら、人間は、少なからず何らかの宗教心(特定宗派を信じるか、無宗教かを問わず)を持ち合わせていると思うからです。政治と宗教を完全に分離すると政治の議論がそもそもできなくなりはしませんか?

払猿: いい疑問だと思います。
 ここは、議論をする政治的な公的空間(国家的公共圏)と個人的に何を信じ誰と議論をするのかという私的空間(市民的公共圏)の境界線をどこにどう引くのか?という問題です。
 石川先生も次のように書いています。

世界観的中立性が厳格に求められる国家的公共圏と、それをとりまく市民的公共圏の群れとの境界線を、どのようにして引くことができるか、である。(石川健治「精神的観念的基礎のない国家・公共は可能か?ー津地鎮祭事件判決」駒村圭吾編著ほか『テクストとしての判決「近代」と「憲法」を読み解く』(有斐閣、2016年)228頁)

阪奈: 石川先生の論文のタイトルも深いですね。

流相: たしかに。
 人間を突き動かすのは感情であったり、信仰心であったりするものですからね、結局。
 理性だけで生きている人間は存在しない…。

阪奈: めずらしく流相が深そうなこと言ってる…。

流相: こら(怒)

払猿: 上記書で、石川先生は、こうも書いています。

何らかの精神的観念的基礎に基づく倫理的な原動力なしには、公共圏は痩せ細るばかりであり、宗教的なそれをも政教分離原則が禁じているとは考えられない。(石川・228頁)

神渡: 凄く納得できます。

流相: しかし、国家的公共圏に宗教が無制限に入っていくことはまずいですよね?
 もしそうなると理性的な議論が不可能になりますから。
 絶対と絶対のぶつかり合いです。
 原動力として精神的観念的基礎的なものが必要なことはその通りだと思うのですが、しかし、精神的観念的なものが国家的公共圏に流入するのはまずい…。
 どうすれば良いのですか?

払猿: そこはリーズニングの問題ということになりますね。

阪奈: そういえば、長谷部恭男先生がおっしゃっている「公私二分論」を思い出しました。

公的な領域は、どんな価値観、世界観の持ち主でも、すべての人びとに共通する社会全体の利益、つまり公益の実現について考え、決める場です。そこに自分が信じる私的な価値観や世界観をそのまま「直輸入」すると、困ったことになりますので、そういうものは私的な領域に置いといてもらって、公の場に出てきた以上は、だれもが納得いく議論を展開してもらう必要がある(長谷部恭男=杉田敦『これが憲法だ!』15頁(朝日新書、2006年))

払猿: そういうことになるでしょうね。

流相: えっ?そうすると、大抵のことは私的領域のこととなりませんか?今の社会は、価値観が多様化しているんですから。

神渡: たしかにそうかも…。

---次回へ続く---

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