憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】司法試験論点分析-民事訴訟法-過去問講義-5<既判力・平成10年第2問>

上場:小問一はこれくらいでいいでしょう。
では、小問二を検討しましょう。何が問題ですか?

神渡:基準時前に相殺適状にあった金銭債権について、基準時後に対当額をもって相殺の意思表示をすることができるか、が問題となります。

上場:どういう結論になりますか?

流相:相殺の意思表示は後訴で主張して前訴確定判決の効力を争うことができます。

上場:判例・通説はそうですね。
しかし、基準時前に既に相殺適状にありますよね。
そうしますと、後訴で相殺の意思表示をすることは遮断されるのではないですか?

流相:(たしかに、小問一と状況は同じに思えるなぁ・・・。)

阪奈:いえ、上場先生、相殺の意思表示の場合は取消の意思表示とは利益状況が異なります。

上場:どういう風に違うのですか?

阪奈:取消の場合は、取消事由は前訴の訴求債権に付着する瑕疵でした。
ですので、訴求債権を争う当事者に前訴で取消事由を主張させることが紛争の蒸し返しを防止することに必要でした。

しかし、相殺の場合、相殺適状は前訴の訴求債権に付着する瑕疵ではありません。
相殺に供する自動債権は訴求債権と異なる別個の債権です。
この債権自体、別訴において訴訟物となることができる権利ですからこの債権行使の自由を保障するべきで、後訴で相殺の意思表示を主張させても前訴での紛争を蒸し返すとはいえません。
また、前訴で相殺の意思表示の主張を強いることは相殺により自己の反対債権を失う当事者にとって実質的な敗訴となり、その当事者に酷です。

上場:結局、取消と相殺とはどこが同じでどこが異なるのですか?

阪奈:前訴の基準時以前に取消事由や相殺適状が既に存在していて、基準時後に取消・相殺の意思表示をするという点では共通しています。
しかし、取消事由が前訴の訴訟物たる権利自体に付着する瑕疵であるのに対して、相殺する債権(自動債権)は前訴の訴訟物たる権利(受動債権)とは別個の債権であるという点が違います。
藤田教授も

相殺権は、前訴の訴訟物である請求権とは別個の反対債権を犠牲にするものであるから、前訴判決で確定された請求権(受動債権)自体に内在・付着する瑕疵にかかる権利とはいえない。

阪奈:と書いています(藤田広美『講義 民事訴訟<第3版>』[東京大学出版会、2013年]352頁)。

流相:(なるほど、なるほど)

神渡:取消権は、前訴の訴訟物たる権利に付着する瑕疵なので、それを争う当事者は前訴で取消権を行使すべきことが民法上要求され、相殺権は、前訴の訴訟物たる権利とは別個の債権ですからその債権行使の自由を後訴で確保することが民法上要求される、というように前訴で主張すべき実体法上の地位があるか否か、で結論が分かれているということですね?

上場:良いまとめですね。
その通りです。

流相:上場先生、結局、ある権利を巡る当事者の実体法上の地位の理解がポイントだったということですか?

上場:判例・通説はそうですね。
実体法上の権利を訴訟に反映させるという思考をするのが、判例・通説ですから。

流相:でしたら、民法の理解がとても重要になりますね。

上場:そうですよ。
ただ、民法は民法、民事訴訟法は民事訴訟法、というように別個に理解するのではダメです。

民法⇔民事訴訟法

というように相互に関連させて理解することが不可欠です。
藤田教授の言葉を借りるなら、

実体法的地位と訴訟政策判断との調整問題

上場:ということになります(藤田・講義352頁)。

---次回へ続く---

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