憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】被害者の同意(錯誤)その3

玄人:「自己決定」の重視か、「パターナリズム」の重視かという実質的な対立点についてはこのくらいにして、理論上の理由を検討しよう。
神渡さんがさっき言ったように、説の対立点は、「動機の錯誤が同意の無効をもたらすか」という点にある。
これについて、「法益関係的錯誤説」は同意の無効をもたらさないとし、
「条件関係的錯誤説」は同意の無効をきたすとしたわけだ。
これらの説は、殺人罪の構成要件をどう考えているのだろうか?

流相:それは、「死ぬ意思がない被害者の生命をその者の意思に反して故意に奪う」罪と考えていると思います。

玄人:それはそうだ。その点に争いはない。
にもかかわらず、動機の錯誤が同意の無効をもたらすか否かについて争いがあるのだが・・・。

教室内: ・・・

玄人:考えるヒントは、「法益」の理解だ。
殺人罪の法益は何だろう?

神渡:「生命」です。

玄人:うん、そうだ。この点には争いがない。
では、「生命」をどう捉えるから上のような学説の対立点が出てくるのか?

流相:「生命」という法益には、その処分の自由も含まれていると思います。
そう考えますと、動機の錯誤は瑕疵ある処分の自由ということになって、同意が無効となると思います。

玄人:「条件関係的錯誤説」になるというわけだね。

流相:そうです。

玄人:では、「法益関係的錯誤説」は「生命」をどう考えているのだろうか? 

流相:「生命」という法益に、生命の処分の自由は含まれていないと理解していると思います。「生命」を放棄することを正確に認識していれば処分意思に瑕疵があっても、それ(法益処分の自由)は殺人罪で保護された法益ではありませんから、同意は無効とならない、という理解だと思います。

玄人:そういうことだ。

神渡:しかし、法益処分の自由が保護法益に含まれないとしますと、詐欺罪のように財産交換の自由を保護法益とする罪はどうなるのですか?

玄人:いいところに気がついたね。
これに対して誰か?

阪奈「法益関係的錯誤説」は法益に法益処分の自由が含まれないとの一般論を主張しているのではないと思います。殺人罪では、「生命」という法益にその処分の自由は含まれていないと主張しているだけではないでしょうか?
詐欺罪では、神渡さんがおっしゃるように、財産交換の自由を保護法益とすることを認めると思いますよ。

神渡:なるほど!

玄人:阪奈さんがいう通り!

神渡:ということは、「法益関係的錯誤説」からでも、殺人罪の法益に法益処分の自由を含めることは可能ということでしょうか?

阪奈:そうだと思います。
実際、この説からでも、法益処分の動機に関する錯誤も法益関係的錯誤にあたるとする考えもありますし。
私は、殺人罪においては、法益処分の自由を保護法益に含める必要はないだろうと考えています。
ですので、Xには殺人罪は成立しないという結論が妥当で、同意殺人罪の限度でXを処罰すれば良いのではないでしょうか?

玄人:殺人罪・同意殺人罪はそれでいいだろう。
別の事例を私から挙げよう。
「Xが自分は年収1億円もある会社社長だ、と偽って女性Aを騙し性交をした」という事例はどう考えるべきだろうか?

流相:「条件関係的錯誤説」からは、XはAの性的自己決定の自由を侵害したものとしてAの同意を無効とし準強姦罪(刑法178条2項)を成立させます。
「法益関係的錯誤説」であっても、性的自己決定の自由を準強姦罪の法益に含めるのですから、同じく準強姦罪が成立すると思います。

阪奈:その理解は正確ではないと思います。

玄人:というと?

・・・その4へ続く。

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