憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】被害者の同意(その3)

玄人:神渡さんは、被害者の同意を構成要件に位置付ける見解と違法性阻却に位置付ける見解の実質的理由が分からないということだった。
実質的理由を説明することができる人はいるかな?

流相:それは、被害者の自己決定を重視する人は前見解を、そうでない人は後見解を採用するのだと思いますが・・・。

玄人:そうだ。
被害者の自己決定を重視するのか否か、が分岐点となる。
皆は、どう考えるかな?何か意見がある人?

流相:はい。
被害者の自己決定を重視すると、たとえば、「やくざの指詰め」の場合も不始末をした組員が指詰めに同意している限り、傷害罪は成立しないことになりますが、その結論は容認しかねます。

阪奈:それは、処罰すべきという結論が先にある議論で妥当ではないと思います。あくまでも、理屈から結論を導くべきです。

流相:しかし、「やくざの指詰め」で本当に指詰めに同意している組員はいないのではないでしょうか?親分などに脅されている場合がほとんどだと思います。そうであるのに、同意があるからといって構成要件不該当を認めるのは納得できません。

阪奈:いや、その場合、親分に脅されているのであれば、有効な同意がないため「被害者の同意」自体を欠くことになるはずです。

流相:そ、それはそうですが・・・親分に脅されたかは証明することが困難ですから、有効な同意があったかの判断は困難になります。
それよりも、違法性阻却段階で法益の衡量をして被害者の同意はその1要素として考慮することがより容易に妥当な結論を導くことができると思います。

神渡:そうはいっても、法益の衡量で何を考慮するのかで判断の容易性は変わってくるように思います。
たとえば、「指詰め」は、一般社会からは到底受け入れられません。一般社会を基準とすると当然に、「指詰め」は許されない行為となります。ところが、やくざの世界ではおとしまえは「指詰め」でつけるのが常識なのでしょう。そのやくざの世界を基準とすると「指詰め」はその世界でのルールとして受容することが可能となるように思います。
憲法の本で勉強したのですが、判例は「部分社会の法理」という考えを採っているようです。やくざの世界も「部分社会」にあたるように私には思えます。そうしますと、「部分社会」内部の行為について裁判所がとやかく言うことはできないことになりそうです。その結果、違法性阻却段階に「被害者の同意」を位置付けたとしても、「指詰め」は違法ではない、という結論を導くことができるように思うのですが・・・。

流相:(え、刑法で「部分社会の法理」?まったく考えたことがない。そう言われるとそうなるような気も・・・)

玄人:今の神渡さんの議論は面白い!
「部分社会の法理」か、たしかに、やくざの世界が「部分社会」にあたるのであればそうなりそうな気がするね。
しかし、やくざの世界が「部分社会」にあたるとはさすがに判例も言わないんじゃないかな?詳しくは、憲法で勉強して欲しいからこの問題はここで留めて置くけど。
ともかく、今の議論をまとめると、被害者の自己決定を重視すれば構成要件不該当説が、そうでなければ違法性阻却事由説が導かれるということで良いだろう。
さらに、私から付け加えておくと、憲法の基本原理である「個人の尊厳」(13条)をどう捉えるかという点に根本的な分岐点があるので、各自考えてみると良いだろう。憲法と刑法がつながる部分だ!
ちなみに、私は構成要件不該当説を支持している。有効な同意があればその決定を最大限認めてやることが「個人の尊厳」の内容だと考えるからだ。やくざの指詰めにしても、不始末をした組員が有効な同意をしている限り、その決定を重視すべきだと思う。如何に、その決定を社会が受け入れがたいとしても、「多様な価値観の公平な共存」を図ることが憲法の目的なので、やくざの世界の価値観が余りに一般社会と違うとしても、一般社会の価値観でやくざの世界の価値観を一刀両断にすることには私は躊躇を感じる。
なお、「多様な価値観の公平な共存」という言葉は、憲法の長谷部恭男先生が使っている言葉だ。憲法で勉強してみると良い。

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