憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】司法試験論点分析-民事訴訟法-過去問講義-3<既判力・平成10年第2問>

上場:平成10年第2問の問題はこうでした。

Yは、Xに対し、次の各事由を主張してそれぞれの確定判決の効力を争うことができるか。
 XのYに対する売買代金請求訴訟においてX勝訴判決が確定した後、YがXに対し、その売買契約はXにだまされて締結したものであるとして、取消しの意思表示をしたこと
 XのYに対する賃金返還請求訴訟においてX勝訴判決が確定した後、YがXに対し,事実審口頭弁論終結前より相殺適状にあった金銭債権をもってXの賃金返還請求権と対当額で相殺するとの意思表示をしたこと
 賃貸人Xの賃借人Yに対する建物収去土地明渡請求訴訟においてX勝訴判決が確定した後、YがXに対し、事実審口頭弁論終結前から存在する建物買取請求権を行使したこと

上場:小問一から検討しましょう。
“確定判決の効力”って何のことでしょうか?

神渡:既判力です。

上場:そうですね。
では、既判力とは?

神渡:確定判決の判断内容の後訴での通用力のことです。

上場:既判力の作用場面は?

神渡:(1)前訴訴訟物と後訴訴訟物が同一の場合
(2)前訴訴訟物が後訴訴訟物の先決関係にある場合
(3)前訴訴訟物と後訴訴訟物とが矛盾関係にある場合
の3つです。

上場:そうです。
小問一では、既判力の作用場面3つの内、どの場合に該当するのでしょうか?

神渡:え~と・・・

流相:???

阪奈:・・・
上場先生、この問題文には書かれていないですよね。

上場:そうですね。
X勝訴判決確定後、YがXに取消しの意思表示をしたとしか書かれていませんね。
しかし、YはXに何らかの訴えを提起しているはずです。
その訴えにおける訴訟物が上の3つのうちのいずれかに該当しない限り、前訴確定判決の既判力は後訴に作用しないわけですから、論理的な思考としては後訴の訴えに含まれる訴訟物が何であるかを検討するという姿勢は不可欠ですよ。
本問では、そこまでの検討は要求されていませんから既判力が生じることを前提に問題に解答していけば良いですね。

ちなみに、YのXに対する後訴はおそらく、YのXに対する売買代金債務不存在確認訴訟でしょうね。
そして、その訴訟物はXのYに対する売買代金債権です。
前訴の訴訟物もXのYに対する売買代金債権でしたから、前訴と後訴の訴訟物は“同一”ということになり前訴確定判決の既判力が後訴に作用するということになります。

では、Yは後訴において売買契約がXにだまされたのだと主張してその売買契約の取消しの意思表示をすることはできるでしょうか?
まず、既判力はいつの時点での判断に生じますか?

流相:既判力の基準時の問題ですね。
既判力の基準時は事実審の口頭弁論終結時です。

上場:条文上の根拠はありますか?

流相:え?
・・・

阪奈:民事訴訟法253条1項4号に判決の必要的記載事項として「口頭弁論の終結の日」が規定されていることが条文上の1つの根拠だと思います。

流相:(そうなのか・・・? 民訴法253、253・・・。
たしかに書いてある。そんな条文知らなかった・・・)。

上場:基準時の判断に既判力が生じるわけですが、その意味は?

阪奈:本問で説明すると、基準時の時点で、XのYに対する売買代金債権が存在するとの判断が確定されたことになります。

上場:そうすると、どうなりますか?

阪奈:既判力が生じた判断を覆すような主張を当事者はすることができなくなります。

上場:どうしてですか?

阪奈:そういう主張を認めてしまうと既判力で確定された判断が後から覆され、確定判決の後訴での通用力が否定されるからです。

上場:そうですね。
よく勉強されてます。
既判力が生じた判断を覆すような主張をすることができないという効力を何と言いますか?

阪奈:“遮断効”といいます。

上場:そうです。
そうすると、小問一はどうなりますか?

流相:はいは~い、今度は僕が答えます。
Yが後訴で売買契約の詐欺取消を主張すると、民法では売買契約が遡及的に無効となります(民法121条本文)。
売買代金債権は売買契約が有効に成立した場合に認められます(民法555条)から、売買契約の詐欺取消により前訴で認められた基準時での売買代金債権の存在が否定されてしまいます。
ですので、このYの主張は既判力の遮断効により遮断されます。
よって、Yは売買契約の取消を主張して前訴確定判決の効力を争うことはできません。

上場:1つの立場ですね。
判例はどう考えていますか?

流相:判例も私の見解と同じです。

阪奈:(“判例も私の見解と同じ”じゃなくて、あんたが判例の見解を支持しているだけでしょ<怒>。不遜なのよ!)

上場:しかし、民法上は取消権はいつまで行使することができますか?

流相:え~と、
「追認をすることができる時から五年間」(民法126条)です。

上場:そうすると、Yの後訴がその5年以内の場合でもYは取消しの意思表示を主張することはできないのですか?

流相:私の立場だとそうなります。判例もそうですし・・・

上場:しかし、民法上は取消権を行使することができる法的地位が保障されているのに訴訟ではそれを否定しても良いんですかね?

流相:(え~~、そんなこと言われても・・・)

---次回へ続く---

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