憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】司法試験論点分析-民事訴訟法-過去問講義-2<訴訟物論争>

上場:さて、いきなりですが、訴訟物の議論からしましょう。
難しい議論がありますが、訴訟物論争の基本を理解することが民訴の理解に直結しますので。
訴訟物の理解を済ませた後で訴訟物と関連する過去問を分析しましょう。

では早速ですが、“訴訟物”とは何ですか?

神渡:審判対象のことです。

上場:たしかに。
では、その審判対象は何ですか?

神渡:被告に対する原告の特定の権利又は法律関係のことです。

上場:今神渡さんが言った内容は旧訴訟物理論(旧理論)に基づいていますね。
正確な内容です。
新訴訟物理論(新理論)で説明できる人?

流相:全実体法秩序により一回の給付を是認される地位(受給権)を訴訟物とするのが新理論です。

上場:新旧理論では、すべての訴え類型で考え方が違うのですか?

阪奈:いえ、確認の訴えでは両説に差がありません。

上場:何故ですか?

阪奈:確認の訴えとは、実体法上の権利関係の観念的判定を通じた紛争解決を目的とする訴え類型ですから、その定義上新理論によったとしても実体法上の権利関係が訴訟物となるからです。

上場:そうですね。
この点の確認は怠らないでください。基本的な部分ですから。
ここでは、特に問題となる給付の訴えに限定して見ていきましょう。
両説では、具体的にはどういう結論の違いとなりますか?

流相:たとえば、所有権に基づく建物明渡訴訟で原告が敗訴した場合を例にとって検討します。
この例では、
旧理論からは、訴訟物は所有権に基づく返還請求権です。
新理論からは、訴訟物は建物の返還を求めうる法的地位(受給権)です。

上場:そうなりますね。
では、流相君の挙げた例で、原告が賃貸借契約終了を理由に建物の明渡請求訴訟を提起することはできますか?
前提知識として、訴訟物が同一であれば既判力という力によって同一の訴訟物で訴訟を提起することはできない、ということを知っておいてください。

流相:え~と、
賃貸借契約終了に基づく建物明渡請求訴訟の訴訟物は、
旧理論だと、賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権が訴訟物となります。
新理論だと、建物の返還を求めうる法的地位が訴訟物となります。
旧理論では、訴訟物は異なりますので、上の例で敗訴した原告は賃貸借契約終了を理由に建物の明渡請求訴訟を提起することができます。
しかし、新理論では、どちらの請求も訴訟物は建物の返還を求めうる法的地位という点で同一です。そうすると、上の例で敗訴した原告は既判力により賃貸借契約終了を理由とした建物明渡請求を提起することはできません。

上場:そういう結論になりますね。
実体法上の権利という点では物権的請求権と債権的請求権とは違います。
その違いをそのまま訴訟に反映させた考えが旧理論です。
新理論は、実体法上の権利をそのまま訴訟に反映させない考えですね。
旧理論の方が素直な考えだと思うのですが、新理論は何故、一定の受給権という実体法にはない概念を用いるのでしょうか?

神渡:それは、旧理論だと紛争が細切れにされて、社会的には1つの紛争が何度も蒸し返されて効率がわるいということに理由があります。
“紛争解決の一回性”
がキーワードだと思います。

上場:でも、旧理論だと、物権的請求権を主張した訴訟では所有権に基づく返還請求権の存否が攻撃防御対象となるだけで、賃貸借契約が攻撃防御の対象となるわけではないですから紛争の蒸し返しとはならないのではないですか?

神渡:被告が原告の建物所有権を認めた場合、占有権原の抗弁として賃貸借契約の存在を主張することがあったりします。その場合は賃貸借契約の存否・終了の有無が審理の対象となってきます。実際には賃貸借契約の存否や終了の有無が審理されたにもかかわらず、賃貸借契約の存否や終了の有無は訴訟物ではありませんから既判力は生じません。ですので、原告は新たに賃貸借契約終了に基づく建物明渡請求訴訟を提起することができます。
しかし、賃貸借契約の存否・終了の有無は既に前訴で審理済みなわけですから、同一紛争が再び蒸し返されたといえます。
そこを新理論は主張しています。

上場:そうですね。
よく勉強してますね。
結局、旧理論は実体法との結びつきを重視するのに対して、
新理論は紛争の一回的解決という訴訟政策を重視するわけです。
新理論の先生からすると、旧理論の考えはあたかも民事訴訟法が民事実体法の従たる存在であるかのような扱いを肯定するように感じるのだと思います。
訴訟政策を重視するということも分かりますが、やはり民事訴訟というのは、民事実体法上の権利を実現するプロセスだと私は思いますから旧理論が妥当ではないか、と考えています。
ただ、旧理論を採るとしても新理論からの批判には考慮すべき点が多々ありますのでこれからもこの講義の中では新理論に触れていくだろうと思います。

さて、訴訟物論争はこれくらいにしておきましょう。
あとは、訴訟物に関連する過去問を検討しましょうか。

---次回へ続く---

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