憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】被害者の同意

玄人:さて、早速だが、講義を始めよう。
今日は、「被害者の同意」について検討する。
「被害者の同意」の典型例は?

神渡:はい。
保険金を詐取する意図で、自動車追突事故を起こし、被害者の承諾を得て身体傷害を負わせたという事例が判例であります。

玄人:それでいこう。
まずは、確認したいことがある。
「被害者」とは誰のことを言うのだろうか?

流相:それは、個人だと思います。

玄人:ほう、そうすると、「被害者の同意」が問題となるのは個人的法益ということになるわけだね。

流相:はい!

玄人:国家的法益について「被害者の同意」は問題とならないのかな?

流相:はい、問題となりません。教科書にもそう書いてあります。

玄人:たしかに、教科書にはそう書いてある。
では聞くが、不法入国罪はどういう場合に成立するだろうか?

流相:それは、日本国への入国が国家によって認められていない者が国家の承諾なく日本国に入国する場合に成立すると思います。

玄人:そうだ。では、国家が入国を承諾した者が日本に入国した場合は不法入国罪は成立する?

流相:いえ、国家の承諾がある以上、不法入国罪は成立しません。
あっ!
そうしますと、国家的法益についても国家の承諾があれば犯罪が成立しない場合があるということですね。

玄人:そうだ。
それは、つまり、国家的法益についても「被害者の同意」を観念することができることを意味するわけだ。
ということは、「被害者」は個人に限らないことになるはずだ。

流相:そうなりますね。

玄人:そもそも、「被害者の同意」の議論はどういう議論だろうか?

流相:え~と・・・

阪奈:法益主体が法益処分に同意した場合に犯罪が成立するのか?という議論だと思います。

玄人:そうだ。
「法益主体が」という点がポイントだ。
ここでいう「法益主体」は、個人に限るだろうか?

流相:いえ、法益には、個人的法益だけでなく、社会的法益や国家的法益がありますから、「法益主体」とは、個人的法益の主体、つまり個人に加えて、社会的法益の主体、つまり社会や国家的法益の主体、つまり国家も含まれるということになります。

玄人:そうなるよね。
「被害者の同意」の議論では、何が問題となっているのか、ということから「被害者」を確定する必要があるということがここで言いたかったことだ。
「被害者の同意」の議論が、法益主体が法益処分に同意した場合の犯罪の成否であるというならば、そこでいう「被害者」とは、法益主体ということになる。
そして、法益には、
(1)個人的法益
(2)社会的法益
(3)国家的法益
があるので、それぞれの法益に対応した法益主体がいるということになる。
ただ、通常、「被害者の同意」で問題となるのは個人的法益だから、以後は、個人的法益について議論を進めていこう。冒頭の典型例も個人的法益が問題となっているし。
なお、最近出版された佐伯仁志教授の著書である『刑法総論の考え方・楽しみ方』(有斐閣、2013年)という本は題の通りの本だから読んでみることをお勧めする。勉強になるはずだ!

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