憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

承継的共同正犯-最高裁平成24年11月6日第二小法廷決定-【対話】司法試験論点分析・”暗黒の章” 共同正犯論10

玄人: 「承継否定説」はどんな説だ?

流相

途中参加者には参加後の事実についてのみ共犯の成立を認める(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)386頁)

流相:という考え方です。
 つまり、後行者は、参加後の事実についてのみ共犯の罪責を負うということです。
 共同正犯の処罰根拠いずれからもこの説しか導かれないと思います、いままでの検討結果からすると。

神渡: そうですね。

複数人の行為を結合して1つの”実行行為”を複数人が実行したといえること

神渡:に共同正犯の処罰根拠を求める「相互利用補充関係」説からも、後行者は先行者が既になした実行行為について何らの因果性を及ぼし得ないわけですから「謀議に基づく実行行為」が認められない、ということですね。
 双方向的な因果性に注目する「法益侵害の共同惹起」説からも当然に、後行者は先行者が既になした実行行為に因果性を及ぼすことはできませんから「謀議に基づく実行行為」が認められない、
 ですのでいずれの処罰根拠論からしても「承継否定説」しか導かれない、ということだと思います。

玄人: そうなるだろう。
 私からすると、「承継否定説」しか考えられないのだがな・・・
 しかし、「限定承継説」があることからすると、悪しき意思を重視する心情刑法がまだ根強いのだろう。
 学説はこのくらいにして、次は判例を見てみよう。
 最近、承継的共同正犯について重要な最高裁判例(最高裁平成24年11月6日第二小法廷決定)が出た(以下では、『平成24年決定』と呼ぶことにする。)。
 どういう事案だった?

流相: 最高裁の決定文をまとめてみますと、

AらがCらに、暴行(手拳での顔面殴打や顔面・腹部への膝蹴り等)を加えた後に、被告人(ここではXとしておきます)がCらの逃走・抵抗困難な状況を認識しつつAらと共謀してCらに暴行を加えた、その結果、Cらは、

・頭部外傷擦過打撲
・顔面両耳鼻部打撲擦過
・右母指基節骨骨折など

の傷害結果を負った

流相:という事案でした。
 つまり、Aらは初めからCらに暴行を加えており、被告人Xは途中からAらと共謀してCらに暴行を加えた、という事案です。

承継的共同正犯(判例図)

玄人: そうだ。
 で、最高裁は何と言った?
 おっと、その前に、原判決はなんと言っていた?

神渡: それは私が!
 最高裁の決定文によりますと、

被告人は、Aらの行為及びこれによって生じた結果を認識、認容し、さらに、これを制裁目的による暴行という自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思の下に、一罪関係にある傷害に途中から共謀加担し、上記行為等を現にそのような制裁の手段として利用したものであると認定した・・・上で、原判決は、被告人は、被告人の共謀加担前のAらの暴行による傷害を含めた全体について、承継的共同正犯として責任を負うとの判断を示した。

神渡:ということです。

流相: 結論としては、被告人の共謀加担前に生じた傷害結果についてまで被告人は罪責を負う、ということですね?

 しかし、その理由は何でしょうか?

玄人: それについては、まず、最高裁決定を見てみよう。
 平成24年決定は何と言っている?

阪奈: これは私が。

被告人は、共謀加担前にAらが既に生じさせていた傷害結果については、被告人の共謀及びそれに基づく行為がこれと因果関係を有することはないから、傷害罪の共同正犯としての責任を負うことはなく、共謀加担後の傷害を引き起こすに足りる暴行によってCらの傷害の発生に寄与したことについてのみ、傷害罪の共同正犯としての責任を負う

阪奈:としました。

玄人: つまり、平成24年決定は何だといっている?

阪奈: つまりは、既に生じている傷害結果について被告人の共謀とそれに基づく行為が因果性を持つことはないから、被告人の加担前の行為から生じた結果については責任を負わない、と言っています。
 もっと端的に言うと、

結果の負責のためには結果発生に寄与したことを要すると述べる点で、因果共犯論に基づく承継否定説の論理に従った(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)389頁)

阪奈:理解を示していると思います。

流相: そうかもしれない・・・
 だけど、原判決は何を根拠に平成24年決定と異なる結論を採ったんだろう?

阪奈: それは、昭和62年7月10日の大阪高裁判決を根拠にしているわね。

・自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思
・一罪関係にある傷害に途中から共謀加担
・現にそのような制裁の手段として利用

阪奈:という文言がほとんど上の大阪高裁判決の判決文と同じだもの。

流相: それはそうだね。
 この原判決が出されたときは、平成24年決定は当然出されていないわけだから、それまで承継的共同正犯の判例として扱われていた昭和62年大阪高裁判決に従ったんだろうね。
 だけど、共同正犯の処罰根拠からは説明することができないだろうね。

阪奈: そうね。

・積極的利用意思
・一罪への途中からの加担
・利用

阪奈:で「限定承継説」を共同正犯の処罰根拠から導く部分がないわね。
 心情刑法ということなんでしょう。
 でも、今回の平成24年決定は、それを全面否定したわけ。

流相: そこは今でも争いがあるんじゃないかな?

---次回へ続く---

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