憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

承継的共同正犯-「全面承継説」-【対話】司法試験論点分析・”暗黒の章” 共同正犯論8

玄人: まずは、「承継的共同正犯」を検討しよう。
 「承継的共同正犯」の典型例は?

神渡: はい。

YがAを強盗目的で殺害した後にYから事情を知らされたXが死体からの財物の奪取に加わった場合(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)382頁)

神渡:が典型例の1つです。
承継的共同正犯(典型例図2)

玄人: そうだな。
 まず、この事例で、Yはどういう罪責を負うだろうか?

流相: 殺害結果が生じているので、たとえYがAの財物を奪取していなくても、強盗殺人罪(240条後段)は既遂となります。

玄人: 判例・通説はそう考えている。
 では、Xの罪責はどうなる?

流相: 可能性としては、3つあると思います。

・強盗殺人罪の共同正犯
・占有離脱物横領罪か窃盗罪の共同正犯
・強盗罪の共同正犯

流相:です。

玄人: どういう考えからそういう結論が出てくる?

流相

・全面承継説→強盗殺人罪の共同正犯
・承継否定説→占有離脱物横領罪か窃盗罪の共同正犯
・限定承継説→強盗罪の共同正犯

流相:となっています。

玄人: まず、「全面承継説」をみてみよう。
 この説の根拠はなんだ?

流相

介入時に先行事実の認識・認容や先行行為者との意思連絡があれば事前に意思連絡があった場合と価値的に同視できるという理由(松原芳博『刑法総論』(日本評論社、2013年)383頁)

流相:に基づいています。

玄人: この説にはどういう批判がある?

神渡: 既になされた先行行為に対して行為後の意思連絡で心理的因果性を与えることはできない、との批判があります。

玄人: そのとおり。
 共同正犯の処罰根拠からするとどうなる?

神渡: 複数人の行為を結合して1つの”実行行為”を複数人が実行したといえるかを重視する「相互利用補充関係」説ですと、先行行為が先行者単独の行為で既に実行されている以上、後行者は物理的にも心理的にも先行者と共に先行行為を実行したとは言えませんから、1つの”実行行為”を複数人が実行したとは言えません。
 ですから、この説から「全面承継説」を導くことはできないと思います。

玄人: そうなる。
 それでも「全面承継説」を導こうとすると、”心情刑法”となる。
 どういうことだ?

阪奈: 後行者は先行行為に物理的因果性のみならず、心理的因果性も持っていません。
 にもかかわらず、先行行為についても完全な責任を負わせるためには、

先行事実の認識・認容+介入時における先行行為者との意思連絡

阪奈: という後行者の主観-他人の不法に同調する心情(松原芳博・前掲書383頁)-を根拠にするしかありません。
 後行者の主観-心情-だけを根拠に共同正犯を認めるのですから”心情刑法”と批判されるのだと思います。
 この「全面承継説」は、共同正犯の処罰根拠を「心情」に求めない限り取りえない見解だと思います。

玄人: 現在、共同正犯の処罰根拠を「心情」に求める見解はないから、この「全面承継説」を採用する者はいないといっていいだろう。
 各自の行為と結果との間の”因果性”を重視する「法益侵害の共同惹起」説からも、「全面承継説」を導くことはできない。
 理由は大丈夫か、流相?

流相: はい、もちろんです。
 後行者介入時の意思連絡をもって、既になされた先行行為に心理的因果性を及ぼすことは不可能だからです。
 因果は遡らないことの論理的帰結です。

玄人: そのとおりだ。
 これまでに検討した共同正犯の処罰根拠からすると、「全面承継説」を採用することはできない。
 残るのは、「限定承継説」と「承継否定説」となる。
 次は、近時有力となっている「限定承継説」を検討しよう。

---次回へ続く---

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