憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】憲法(事例問題の解法~三段階審査論~)その2

・・・続き。

払猿 :どんな事例にしましょうか?というか、既にシラバスに書いてありましたので、それにしましょう。
≪判例≫「白タク営業事件」です。誰か簡単に事案を説明してください。

神渡 :はい。

≪判例事案≫
「白タク営業事件」(最大判昭和38年12月4日)

タクシー営業の免許を受けずに自家用車を用いて有償運送をしていた者(便宜上Aとします)が道路運送法に違反するとして有罪とされた事件

でした。

払猿 :そうですね。では、神渡さんがAさんの弁護人だとして、どういう風にして憲法上の主張をしますか?

神渡 :え~と・・・(難しい)。

払猿 :憲法も法です。法的思考は常に「権利」を巡ってなされます。裁判所で争うということは「権利」が侵害されたと主張する者がいるということです。
ということは、弁護人がこの事件で国家の行為を違憲だと主張するためには、最終的に何を言わなければなりませんか?

神渡 :国家行為から、Aの憲法上の権利が侵害されたということを言わなければなりません。

払猿 :そうですね。最終的にはそういうことを言わねばなりません。
では、その主張をどうやって導こうか?というのを検討するのが、憲法の「思考枠組」の問題です。

神渡 :はい。

払猿 :では、憲法上の権利侵害があると主張するためには、まず何を考えないといけないでしょうか?分析的に考えてみましょう。

神渡 :権利侵害があるかどうかですか?

払猿 :そうですね。
では、権利とは何でしょうか?

神渡 :それは・・・

流相 :法的に保護された利益だと思います。

払猿 :それで良いと思いますよ。
そうするとどうなりますか?

流相 :法的に保護された利益の侵害があるかを検討する必要があります。
あ、権利侵害があるといえるには、
(1)「利益の侵害」があること、
(2)その利益が「法的に保護されていること」
の検討が必要になります。

払猿 :そうなりますね。
なお、ここでの権利は「憲法上の」権利のことですから、(2)の「法的に保護」とは、「憲法的に保護」という意味になります。
ここまでの検討を踏まえて、「白タク営業事件」を考えてみましょうか?誰か挑戦したい方は?

教室内 : ・・・

払猿 :いや、簡単ですよ。Aにどういう不利益があるか?ということです。

阪奈 :あ、はい。Aは自家用車を使って、自由に有償で運送営業をすることができないという不利益を被っています。

払猿 :その不利益は何から生じたのですか?

阪奈 :え~と、有償運送を免許制にしている道路運送法から生じたと思います。

払猿 :良いですよ。法律からAの不利益が生じたということです。
では、ここで問題となっている利益は憲法上保護されていますか?つまり、自由に有償で運送営業をする利益(有償で運送営業をする自由)が憲法上保護されているでしょうか?憲法上、そのような利益(自由)を保障するという明文規定はありますか?

流相 :ないです。

払猿 :そうすると、憲法論の主張はあきらめるべきでしょうか?

流相 :いえ、憲法22条1項の「職業選択の自由」で保障されると解すべきです。

払猿 :ほう。しかし、「有償で運送営業をする自由」と「職業選択の自由」は似てもにつかないように思えますが・・・。

流相 :そうですが・・・。
判例は、営業の自由を「職業選択の自由」に含めていますから、「有償で運送営業をする自由」は22条1項で保障された自由だと思います。

払猿 :結論は、そうなるでしょうね。
しかし、判例は何故、営業の自由を「職業選択の自由」で保障しているのですか?そこの理解が重要ですよ。

流相 :自己実現に不可欠だからでしょうか?

払猿 :大雑把すぎます。憲法上の明文では規定されていない自由を認めるには趣旨に遡った丁寧な論証が必要になります。ここを疎かにする受験生が多いのですが、一番重要といっても過言ではありません。
刑法でいうと罪刑法定主義のようなものです。刑法では、処罰する構成要件がないといかに処罰の必要性が高くても処罰できませんよね。憲法も保障する規定がないと、いかに保障の必要性が高くても憲法的に保護することができないんです。
職業選択の自由を保障した趣旨は何でしょうか?

流相 :仕事は人の人生の大半を占めます。とすると、どういう仕事をするかはその人の人生に深く関わるといえます。人生に深く関わる仕事を自由に選択することができずに、他者から決定されるとその人の人生は他者によって決定されてしまうのと同じことになります。そこで、憲法は個人が自己の人生を自律的に決定することができるようにと職業選択の自由を保障したのだと考えます。
もっとも、選択は自由でも、選択した仕事を自由に行えない、つまり営業の自由がないならば、選択の自由を保障した意味がなくなります。これでは、職業選択の自由は画餅に帰してしまいます。なので、営業の自由は「職業選択の自由」として保障されるのだと考えます。

払猿 :良いと思います。よく考えられていますよ。そういう風に具体的に考えることが憲法でも必要です。
「有償で運送営業をする自由」は憲法22条1項の「職業選択の自由」で保障されることになりましたね。
一応、これまでのことをまとめてみよう。

(1)利益侵害状況の確認

(2)憲法上の権利条項の保障範囲(保護範囲)

こういうことになりました。実は既に三段階審査論の「思考枠組」に踏み込んでいます。ま、最後にもう一度まとめますので、今はあまり気にしないでください。

払猿 :では、次に行きましょうか。

その3へ続く・・・。

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