憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

【対話】実行の着手を巡って(その3~離隔犯~)

玄人 :「危険結果説」と「危険行為説」との違いを際だたせるために、「離隔犯」の問題を検討してみよう。
誰か、「離隔犯」の事例を挙げてくれないか?

神渡 :はい。
AがBを殺害する意図で、毒入り饅頭をB方へ向け郵送したところ、郵便事故にあってその饅頭がB方へ届かなかったという事例が良いかと思います。
離隔犯2

玄人 :いいね。その事例でいこう。
まず、何が問題となる?

神渡 :AはBを殺す意図を持っていましたから殺人罪の成否が問題となります。

玄人 :Bは死亡したのかな?

神渡 :いえ、Bは死亡していませんから、殺人未遂罪の成否の問題でした。

玄人 :では、次に何を検討する?

神渡 :殺人の実行の着手があるかが問題となります。

玄人 :「危険結果説」と「危険行為説」からどうなる?

神渡 :はい。
まず、「危険結果説」からは、B死亡の切迫した危険は毒入り饅頭がB方に届けられた時点で認められます。しかし、この事例では、毒入り饅頭は郵便事故によりB方に届けられていませんから、B死亡結果発生の切迫した危険性は認められません。ですので、実行の着手は認められません。
対して、「危険行・・・

玄人 :ちょっと待ってよ。
まず、ここで補足しておこう。「危険結果説」は、未遂犯を結果犯と捉える見解だと言ったよね。その結果犯としての未遂犯の構造について実は、「危険結果説」内部で説明に争いがある。実行行為と実行の着手を分けるのか否かという点での説明の違いだ。この点は、実行行為の基本構造に関わるが、ここでは説明の仕方に違いがあると指摘しておくだけにしておこう。
では、神渡さん続けて。

神渡 :はい。「危険行為説」からは、毒入り饅頭の郵送を依頼する行為に人の死亡結果発生の現実的危険性が認められると思います。

玄人 :何故?

神渡 :郵送を依頼すれば、ほぼ無事に配達されるという郵送事情とAがBを殺そうという意図の下に毒入り饅頭の配達を依頼したということを考えると、郵送依頼行為があればその饅頭が配達されそれを食して死ぬ危険性が観念的にではなく具体的に行為時にあると考えられるからです。

玄人 :うん。いいと思う。そうすると、両説で結論はどうなる?

神渡 :「危険結果説」からは、殺人未遂犯は成立しませんが、「危険行為説」からは、殺人未遂犯が成立します。

玄人 :そうなるね。結論が正反対となるわけだ。そうすると、どの説を採るかが極めて重要となってくる。学説が激しく対立するわけだ。
どの説を支持するかは、皆さんに任せるが、私は「危険結果説」を支持している。刑法を行為規範として考える行為無価値論、その行為無価値論を基礎とする「危険行為説」は、現行憲法の価値観にもそぐわないと考えているからだ。
この講義は、私がどういう説を採るかを開陳する場ではないから、結論だけを言っておくにとどめよう。もっと知りたい人は研究室に来てくれればその時に対応するから。
どの説を採るにしても、注意してほしいのは、体系的な根拠を押さえることだ!「危険結果説」や「危険行為説」の背後には違法性論を巡る対立があるのだ、ということを是非押さえた上で、どの説を採るかを決めてほしいと思う。
では、今日の講義はここで終わりましょう。
それでは、また来週!

 

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