憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

未成年者略取誘拐罪の保護法益 【対話】司法試験論点分析◇刑法過去問講義-その25-◇平成26年度[刑事系科目 第1問]

流相: 管理権者を実質に即して判断すべきといっても、建物を実質的に管理している人ってどう判断するの?

阪奈: そこは、
・家賃を誰が支払っているか?
・誰が住んでいるか?
で判断すればいいんじゃないの。

流相: とすると、甲方の管理権者は甲で決定だね。
 後は、管理権者甲の意思に反する立入りかどうかの検討だ。
 これは、さっき神渡さんが言っていたように、甲は乙に、

二度とアパートには来ないで。アパートの鍵は置いていって。

流相:と言っていることから、乙が甲方に立ち入ることを拒否する意思を表明しているといえるね。
 にもかかわらず、乙は以前作っていた合鍵を用いて甲方に立ち入っているから管理権者甲の意思に反する立入りにあたる。よって、住居侵入罪が成立すると。

阪奈: そうなるでしょうね。
 ということで、いよいよ未成年者略取誘拐罪の成否を検討するわよ。
 Aが「未成年者」であることに問題はないわね。
 乙がAを甲方から連れ去った行為は、「略取」と「誘拐」のどちらかしら?

流相: う~ん、Aを欺罔・誘惑することはそもそもできないし、甲を欺罔・誘惑したわけでもないから「誘拐」にはあたらないだろうね。
 ということは、「略取」だろう。

神渡: そうね、「略取」か「誘拐」かといえば「略取」よね。

流相: でも、本問では、乙の略取行為はAを助ける行為といえるんだよね。
 それでも乙のこの行為に未成年者略取罪が成立するのかなぁ?

神渡: たしかにそうよね。
 Aは甲方で育児放棄されていたのだから、甲方からAを連れ去る行為は正しい行為にも思えるの。

阪奈: そこも未成年者略取誘拐罪の保護法益の問題ね。

流相: たしか、未成年者略取誘拐罪の保護法益をめぐっては、監護権と被拐取者の自由(安全)をどう位置づけるかで対立がある。
 判例は、被拐取者の自由から独立した監護権も保護法益と捉えているようだ。
 これに対しては、被拐取者の自由・安全と区別された独自の意義を監護権に認めない説(被拐取者の自由・安全)が多数説となっている。

阪奈: そうね。
 多数説からすると、乙が甲方からAを甲に無断で連れ去った行為は甲方で育児放棄されていたAの生命を救う行為といえるから被拐取者の安全を侵害する危険性を有する行為、つまり「略取」とはいえないでしょうね。
 対して、判例が採用しているとされている、監護権も保護法益と捉える見解だと、乙が甲方からAを甲に無断で連れ去った行為は「略取」にあたるでしょうね。

流相: Aを現に監護していたのは甲であって、甲方から出て行った乙に監護権はなかったからだね。

阪奈: そう。
 ただ、甲乙は離婚しないまま別居しているだけなので乙にも親権がある(民法818条3項)。監護権は親権に含まれるから(民法820条)今なお、乙にも監護権があると考えるのが筋なのかもしれないわ。
 そうすると、監護権者乙にも未成年者略取誘拐罪が成立するかの問題となるわね。
 判例の立場からは監護権者は未成年者略取誘拐罪の主体から除外されるのが基本となるけど、監護権者甲と乙で意思が一致していないことをどう考えるかで結論は分かれそうね。

流相: 未成年者略取誘拐罪の保護法益をどう捉えるか、複数監護権者の意思が不一致の場合をどう考えるか、で結論が変わってくるということだよね?

神渡: 判例の見解をとって監護権者甲の意思を監護権者乙より優先するとした場合、乙のA連れ去り行為に未成年者略取誘拐罪は成立するということなのですね。
 でも、Aの世話をしないでAを殺そうとしていた甲の監護権を乙の監護権よりも優先させることはおかしい気がするんですが・・・

流相: ん?

---次回へ続く---

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