憲法・刑法をメイン素材として【論点】を巡る学説を可能な限りシンプルに分析したり、【過去問】の分析などをしてます。 理系からロースクールに入学した女学生・【神渡(カント)さん】と、男性教授・【玄人(クロード)先生】の対話などを主として物語は進みます。 単に学説を分析するだけではなく、その分析結果を過去問や判例の理解にどう活かせるかについても検討する予定です。

丙はAの生命の危険を支配していると言えるのだろうか?【対話】司法試験論点分析◇刑法過去問講義-その23-◇平成26年度[刑事系科目 第1問]

神渡: 丙の新たな不作為について殺人罪が成立しないかを検討するわけですね。

阪奈: その必要はあるわ。
 <行為の危険性支配>と<因果経過の支配>への当てはめが必要になるわね。

流相: とはいえ、既に甲がAの生命の危険を創出支配して、因果経過も支配しているわけだから、丙の新たな不作為について作為義務は認められないんじゃないかって気がするんだよ。

阪奈: たしかに、既に甲がAの生命の危険を創出支配しているわね。
 でもよ、7月3日昼には病院で適切な治療を受けさせない限りAを救命することは不可能な状態となっているの。
 この状態って、甲が創出したAの生命の危険よりもより切迫した危険と言えるんじゃない?

流相: まぁ、そうだね。

阪奈: Aがそんな状態に陥っているのに、丙は甲の母親に嘘を言って、Aに会わせていないのよ!
 しかも、丙は、甲の母親をAに会わせれば必ず甲の母親がAを病院に連れて行き、Aが助かってしまうと思っていたの。
 その上で嘘を言って、衰弱したAを甲の母親に見せていない!
 これって、丙以外の他者の介入を排除して切迫した危険状態を維持させようとしたということよね?

流相: そういわれたらそうだけど・・・

阪奈: ということは、丙はAの切迫した生命の危険を支配していたといえるのじゃないかしら?

流相: たしかに。
 でもさ、Aの生命の危険は、そもそも甲がAに授乳等をしないという不作為が発端だよ。
 丙がAの生命の危険を創出したんじゃないから(1)行為の危険性支配は認められないんじゃない?

阪奈: いやいや、ある人が創り出した危険をその人がいなくなった後に、別の人が支配するということだってあると思うのよ。
 本問で言うと、甲が創り出した危険であっても、その後、甲が外出している間に、さらに高まったAの生命の危険をAの救命の機会を奪うという形で丙が支配していると言えると思うわよ。

流相: う~ん、難しい問題だなぁ・・・
 どうすれば?

阪奈: 阪奈さんの考えもありだろう。
 そこまで認定するのであれば丙に不真正不作為犯の殺人罪を成立させることは可能だ。
 結論はどちらでもいいが、肯定するにしろ否定するにしろ、”事実認定”が重要になる。

神渡: もし、丙にも殺人罪、未遂だと思いますが、が成立すると考えると、甲と丙の2人に殺人罪が成立するということになりますよね?
 2人の罪はどういう関係になるのでしょうか?
 甲と丙は共謀しているわけではないですから、共同正犯にはならないと思います。
 あっ!もしかして同時犯ですか?

阪奈: そういうことになりそうね。

---次回へ続く---

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